部屋にはベッドと小さい白黒のアンテナテレビが付いていた

テーブルや机は無いケド十分な広さ。
ホームステイ先の個屋にテレビがあるのはまれなので、白黒と言えども十分豪華だった。

しかし、初日の夜はなかなか寝付け無い。
興奮していたからではなく、むしろそのテレビが怖かったのだ。

私は渡航前に「螺旋」「リング」の映画を観ていた。
既に映画を観た方はご存知の通り、再生したビデオの井戸の中から女の人が這い出てくる。
それが恐怖心をあおる映画なのだが、寝る直前にその映像を思い出してしまったのだ。

言葉も通じない海外で初対面の人たちの家。
テレビを付けたら白黒だし、消したら消したで静まりかえる。
どうしようかとゴロゴロ寝返りをうっている内、ある事に気づく。

「ん?ここはロンドンだけど、日本のお化けとかは来るのか?」

西洋にもお化けはいる。
ロンドン塔は日中問わず、常にお化けが出ると言う噂も本で読んだ。
「って事は、ここだと西洋のお化けが出るのかなぁ?」
と思い始め、
「西洋お化けだったら言葉わかんないなぁ。もしかして中世のドレスや甲冑を着てるのか?」
なんて今度は前向きに考え始める。
そう考えるとむしろ会って見たい気にすらなってきた。
想像しているお化けは音楽家やマリーアントワネット等の貴族なのだが、そもそも彼等はロンドン出身では無い。

そんな物思いに耽っていたらいつの間にか眠りについていた。
明日から、いよいよ学校である。