柴田明夫さん 著作

ヴァーチャルウォーターをご存知ですか?
輸出入される農産物や製品を生産する際に使用している仮想水の事で、
つまり原産地で作られる製品に使った水が、輸入国で消費される間接的な水の事である。

日本は食料自給率も先進国では圧倒的に低く、輸入大国なので、
このヴァーチャルウォーターを大量に輸入している。
水の惑星と言われる地球で、人類が利用出来る淡水は驚く程少なく、その淡水のうち7割近くは、南極や氷河、万年雪などに閉じ込められている。
つまり人間が利用しやすい河川や湖沼の水は3割ほどしかない。

そんな話から始まるこの本は、興味深い話が満載。
数値やデータを織り交ぜながら、世界的な水問題、日本の河川管理、地球温暖化がもたらす水と食料の危機などわかりやすく書かれている。

日本の食料自給率は、ここ数十年でジリジリと下降し、前述したとおり主要先進国の最低水準である。
国土の割に人口が密集している事や、食生活の変化、農業就業者の激減、様々な要因がある。つい先日、政府は食料自給率の引き上げ目標を5割から6割にする事を検討しているという記事を出した。

日本は、輸入した食料を捨てる不思議な国だと言われるくらい豊かに見えるが、輸入に依存しているため、世界的な食料難になった場合、売ってくれる国が減少、もしくは価格の高騰。その食料難に、水はとても重要な役割を果たしているという事を本を読んで改めて気づかされる。
農作物を育てるにも、食肉を育てるにも水が必要で、トイレやお風呂としての生活用水もとても重要なのだ。
中国の急激な発展にともない、水管理の整備が間に合わないため、水質汚染の問題も広がりつつあるようだし、砂漠化による水不足の心配もある。

そんな悲観や危機感だけでは無く、海水淡水化事業にも触れている。
これは、海水を淡水に変えて利用するという事業なのだが、少しづつだが技術は進歩しているらしい。
私は水に関して興味を持っているが、本書は「まだまだ知らない事が多いな」と気づかされた一冊である。

比較的に読みやすいと思うので、ご興味のある方は是非一読を。